会社経営−消滅した会社NERECから学ぶ >> 大企業病

会社経営

〜 社員採用の難しさ 〜

Kiyomi Tabuki


まえがき

コンテンツ「大企業病」で社員採用について触れたが (*1)、ここでは、社員採用に関する情報を付加する。


■ 社員採用の難しさ

コンテンツ「大企業病」で、社員を採用する担当者の無責任さがダメ社員の採用につながり、そのダメ社員を部下としてあてがわれた上司の悲劇を書いたが、採用の担当者の無責任さが常に悪い結果になるとは限らない。悪い結果になる確率は高いが、逆に、きちんと選考している会社で採用されなかった「変わり種」を採用する可能性がある。意外と、この変わり種が面白い結果を生むこともある。そもそも、人の能力や将来を採用試験や面接などで見極めることは至難の業なのだ。

自分が脱サラして作った会社でも、過去、数多くの人材を採用してきたが、創業して10年くらいまでは失敗続きだった。採用を希望する人間は優秀に見えるようにカモフラージュされていることが多い。特に呆れたのが、そのカモフラージュが政府機関の主導で行われていたケースだ。

バブルが崩壊し、あちらこちらの会社でリストラによる社員解雇が発生、当然、新入社員の就職も大氷河期という時期があった。その頃、政府は失業率の低下に歯止めをかけるための諸政策を行った。そのほとんどが税金の無駄使いと言えるが、その税金の無駄使いプログラムの1つが、失業中の人に「いかにしたら企業に就職できるか」を付け焼き刃でトレーニングするというものだった。その中には、自分に不利になるような情報を会社側に伝えないと言ったようなものも含まれる。そうして、いかにも「私は情熱を持って仕事に取り組み、良い結果を出しますよ」という印象だけを与えるような仮装が施された人がハローワークなどを通して紹介される。

ある人を社員として雇用したのだが、その人は実はノイローゼの一種の病気を持っていたのだが、それを隠して入社した。当時、私自身、平成不況に対抗するため奔走しており、その人のことは部下2人に任せてあったのだが、ある日とんでもないことが発覚した。その人は入社後ノイローゼが進行し、ノイローゼを押さえるための薬を飲む量が次第に増加。このノイローゼを押さえるための薬というのは催眠作用があるようで、日中寝てしまい仕事にならなくなる。早い話、その人は会社に来るのだが仕事をしないで寝てしまう状態になっていたのだ。しかし、部下は非常に優しい人思いの人であったためノイローゼさんをかばって、表面化させず、ノイローゼさんの分まで仕事を抱え込んでしまった。

しかし、部下とて処理能力に限界がある。仕事はたまりにたまり、ある日、2人の部下の片方までノイローゼになってしまったのだ。ちなみい、後から分かったことだが、この部下も軽いノイローゼ持ちだったようだ。この時点で、やっと私の所に状況が伝わって来た。結果的に、部下2人とノイローゼさんの計3人は離職ということになった。その結果、ため込んだ仕事の整理もつかず、新たな仕事の処理も出来なくなり機能不全に陥った。

それ以来、自分は、信頼できる人の推薦がある人の採用を優先するようになった。社員を採用することは非常に難しい。


*1 中小企業であれば、社員の採用は会社の将来を左右する非常に重要な事柄であるから良く見極めて採用するだろうが、大企業病になった会社は見極めに対する真剣さに欠ける。採用の担当者がどんな人材を採用したところで本人はあまり困らないからだ。困るのはダメ社員を強制的に部下にあてがわれる上司だ。

自分も、昔、主任の時代に、ある典型的なダメ社員が部下にあてがわれてしまったことがある。このダメ社員君は、仕事に関してはチャランポランで、就業時間中でも自分の興味がある別のことをやってるようなタイプだった。植木等の「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」系の映画や歌は面白くて好きだが、自分の部下で実現するとは何たる悲劇。

1年に1回、主任は部下の評価を行う人事評価制度があり、この部下をできるだけ正しい評価結果となるようにマイナス査定をした。だが、このような査定を行う主任は希である。結局、マイナス査定をすると主任は部下に恨まれるだけで何の得も無い。このダメ社員くんも、自分の部下になる前は、他の主任の部下であった訳で、その主任の評価は当たり障りの無いものであった。そう、このダメ社員くん、タカをくくっていたのだ。しかし、自分は主任の責任を優先しマイナス査定を行い、部下の恨みを買う方を選んだ。

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